1. 粉体塗装(パウダーコーティング)とは
1.1 基本原理と仕組み
粉体塗装は、有機溶剤を使わず、樹脂・顔料・添加剤などを細かな粉末状にした塗料を用いる塗装技術です。塗料を静電気で被塗物(塗装したいもの)に付着させ、180~200℃ほどの高温で焼き付けることで、強い塗膜をつくる点が最大の特長です。
具体的には、専用の静電粉体ハンドガンで粉末塗料をマイナスに帯電させ、アースされた被塗物をプラスに帯電させる仕組みを使います。そうすることで、複雑な形状でも塗料がしっかりと引き寄せられます。最後に高温で加熱すると粉末が溶け、連続性のある膜となって硬化するのです。
ただし、この高温焼付工程に耐える必要があるため、一般的には金属など導電性をもつ素材が対象となります。近年、環境配慮や塗膜性能が求められる現場では、溶剤を使わない粉体塗装が広く採用されています。
粉体塗装の風景
1.2 主なメリット
- 環境配慮
有機溶剤を含まないため、VOC(揮発性有機化合物)の排出がほぼゼロ。作業者や大気への影響を大幅に抑えられます。 - 耐久性・性能
一度の塗装で厚膜がつくれ、耐衝撃性・耐薬品性・耐候性などに優れます。溶剤が入っていないため、品質が安定しやすいのもメリットです。 - 効率性・経済性
静電効果で塗着効率が高いです。初期設備のコストは高めですが、長い目で見るとメンテナンス頻度が減り、経済的にもメリットが大きくなります。
1.3 一般的なデメリットとトコウの解決策
- 外観(ゆず肌)
粉末塗料が溶融・硬化する過程で、液体塗料より表面に細かな凹凸が出やすい性質があります。近年は塗料や装置の進歩により、かなり滑らかな仕上がりも可能ですが、求める外観に応じた塗料や焼付条件の最適化が必要です。株式会社トコウの強み
独自のプロセス管理でゆず肌を最小限に抑え、綺麗な仕上がりを実現しています。 - 薄膜塗装の難しさ
静電気的特性や粒子サイズの制約から、30μm以下の極薄膜で均一に仕上げるのは難しく、逆に厚膜による保護力の高さが強みとなります。 - 調色・色替え
現場での微調整が難しく、少量多品種で頻繁に色を変えたい場合は、ブースやガンの清掃が手間になります。株式会社トコウの強み
最小発注量60kgから特注色に対応でき、通常より小さなロットでも2週間程度で用意可能。試作品や少量生産にも柔軟に応えられる体制を整えています。
このようなデメリットを踏まえながら、株式会社トコウでは「小ロット対応」「特注色の短納期」「試作品から量産まで一貫サポート」などのサービスを提供し、多様なニーズにお応えしています。
2. 粉体塗装と他の塗装方法との比較
2.1 粉体塗装 vs. 焼付塗装
「焼付塗装」とは、高温で塗膜を硬化させる塗装全般を指します。そのため、粉体塗装は「粉体焼付塗装」ともいえるのですが、ここでは主に「溶剤焼付塗装」との比較を挙げます。
| 比較項目 | 粉体塗装 | 溶剤焼付塗装 |
|---|---|---|
| 塗料 | 有機溶剤を含まない粉末塗料 | シンナーなどの有機溶剤を含む液体塗料 |
| 工程 | 静電塗布 → 焼付硬化 | スプレー塗装 → 溶剤の揮発 → 焼付硬化 |
| 性能 | 一度で厚みが出しやすく、耐摩耗性に優れる | 強固だが、同等の膜厚を得るには複数回の塗り重ねが必要な場合あり |
| 環境負荷 | VOCがほとんどゼロ | 焼付時にVOCが発生しやすく、環境対策が必要 |
| コスト | 初期設備投資は大きいが、長期的にはコストを抑制できる可能性が高い | 設備費用は比較的安いが、塗料ロスやVOC対策費が発生 |
| 補修 | 部分補修が難しいことがある | システムによっては比較的簡単にリタッチが可能 |
2.2 粉体塗装 vs. 一般的な溶剤塗装
熱を使わずに自然乾燥させる溶剤塗装(常温乾燥や二液硬化など)とも比較されることがあります。
| 比較項目 | 粉体塗装 | 一般的な溶剤塗装 |
|---|---|---|
| VOC排出 | ほぼゼロ | VOCが多く排出され、安全対策や火災リスクへの配慮が必要 |
| 塗膜厚 | 1回でしっかりと厚みを出せる | 同じ厚みにするなら複数回の塗り重ねが必要 |
| 塗着効率・廃棄物 | 静電気利用に加え、最大約95%の塗着効率も可能 | スプレー時にオーバースプレーが多く、材料ロスが大きい傾向 |
| 仕上がり・性能 | 物理的強度や防錆性で優位 | メタリックやパールなど特殊仕上げがしやすい |
| 柔軟性 | 専用設備が必須で、色替えにはブースやガンのクリーニングが必要 | 刷毛塗り・ローラー塗りなど多様な手法が使え、色替えも容易 |
| コスト | 初期投資は高いが、材料ロスの少なさと塗膜の寿命の長さから長期的に有利な場合あり | 設備費は低めだが、塗料ロスやVOC対策コストがかかる |
2.3. 塗装方法比較表
以下の表では、粉体塗装、溶剤焼付塗装、一般的な溶剤塗装の主な特徴を比較しています。それぞれの塗装方法の長所・短所を理解することで、用途に合わせた最適な選択が可能になります。
| 特徴項目 | 粉体塗装 (Powder Coating) |
溶剤焼付塗装 (Solvent Bake Coating) |
一般的な溶剤塗装 (General Solvent Coating) |
|---|---|---|---|
| 概要 | 粉末塗料を静電気で付着させ、加熱硬化 | 液体塗料(溶剤系)を塗布し、加熱硬化 | 液体塗料(溶剤系)を塗布し、常温乾燥または二液反応硬化など |
| 主材料 | 粉末状樹脂、顔料、添加剤 (VOCフリー) | 液体樹脂、顔料、添加剤、有機溶剤 | 液体樹脂、顔料、添加剤、有機溶剤 |
| 標準工程 | 前処理→静電塗布→焼付乾燥→検査 | 前処理→スプレー塗布→(セッティング)→焼付乾燥→検査 | 前処理→塗布(スプレー/刷毛等)→乾燥/硬化→検査 |
| 標準膜厚 | 厚膜 (例: 50-100µm) | 中膜~厚膜 (調整可能) | 薄膜~厚膜 (調整可能) |
| 耐久性(耐摩耗/防錆) | ◎ (非常に優れる) | ○~◎ (優れる) | △~◎ (塗料による) |
| 耐候性 | ○~◎ (ポリエステル/アクリル/フッ素系) | ○~◎ (塗料による) | △~◎ (塗料による) |
| 仕上がり(平滑性) | △~○ (ゆず肌傾向、改善中) | ○~◎ (良好) | ○~◎ (良好) |
| 環境影響(VOC) | ◎ (ゼロ) | × (有り) | × (有り) |
| 塗料ロス/廃棄物 | ◎ (少ない) | × (多い) | × (多い) |
| 適用素材 | 耐熱性・導電性のある素材 (主に金属) | 耐熱性のある素材 | 多様な素材 (低温硬化タイプあり) |
| 現場施工 | × (不可) | × (不可) | ○ (可能) |
| 色替え/小ロット | △ (手間大、調色ロット大が一般的) | ○ (比較的容易) | ○ (容易) |
| 初期/ランニングコスト | 高/低~中 | 中/中~高 | 低~中/中~高 |
| 主な用途 | 工業製品、建材、自動車部品、家電 | 自動車、家電、工業製品 | 建築、橋梁、船舶、DIYなど広範 |
(評価: ◎:非常に優れる/容易、○:優れる/可能、△:やや劣る/制約あり、×:劣る/不可)
(注: 上記は一般的な比較であり、個別の塗料製品や塗装条件により異なります。)
3. トコウにおける粉体塗装工程
粉体塗装は、「塗料を吹き付けて焼き付けるだけ」で完成するわけではありません。高品質を実現するためには、下地処理から最終検査まで、一連の工程を厳密にコントロールする必要があります。株式会社トコウでは、長年培ったノウハウを活かした最適なプロセス管理により、多様なご要望に応えられる仕上がりを提供しています。
3.1 概要
粉体塗装は、以下の工程から成り立ちます。
- 前処理(下地調整・化成処理)
油分や錆をしっかり除去し、防錆性と塗料の付着性を高める要のステップ。 - 粉体塗布(塗装)
静電気を利用して粉末塗料を付着させる工程。 - 焼付乾燥(硬化)
加熱で粉末塗料を溶融・硬化させる重要なプロセス。 - 冷却・検査
塗膜を落ち着かせ、外観・性能を最終確認。
とくに「前処理(下地調整・化成処理)」は塗膜の耐久性や外観に直結するため、トラブル防止の鍵となります。
3.2 Step 1: 前処理(下地処理)
重要性
被塗物(塗装対象物)の表面に付着した油分や錆、汚れなどを取り除き、塗料が密着しやすい状態をつくる工程です。前処理が不十分だと、塗膜の剥がれや防錆性能の低下など、ほとんどの塗装不良がここで発生します。
主な工程
- 脱脂
アルカリ性の洗浄剤や溶剤で油分や汚れをしっかり除去。油が残ると密着不良の原因になるため、手袋の汚れにも注意を払います。 - 除錆・表面調整
サンドブラストやショットブラスト、酸洗いなどで錆や酸化スケールを落とし、微細な凹凸をつけて塗料の”食いつき”をよくします。 - 化成処理
リン酸塩やジルコニウム系などの処理液で、防錆皮膜を形成。塗料の密着性と耐久性を高めます。- リン酸鉄処理:簡便だが防錆性能は限定的
- リン酸亜鉛処理:より高い防錆力を持ちますが、スラッジ処理など設備が必要
- 水洗 → 水切り乾燥
化成処理後に水洗で残留液を徹底的に落とし、乾燥炉で水分をしっかり飛ばします。水滴が残ると焼付時に塗膜に不具合が生じるおそれがあります。
品質管理
温度や処理液の濃度・時間、化成皮膜の均一性などを日々チェックし、前処理の仕上がりを安定させています。
3.3 Step 2: 粉体塗装(塗料塗布)
塗装環境
粉体塗装用の専用ブースで作業し、飛散した塗料の回収ができる構造にしています。ブース外へ粉塵が流れ出ないよう配慮しつつ、帯電リスクを管理するためにアース(接地)も徹底しています。
塗装方法
一般的にはコロナ帯電方式の静電スプレーガンを使用します。粉末塗料をマイナスに帯電させ、プラスに帯電した被塗物に効率よく付着させる仕組みです。入り組んだ形状には、トリボ(摩擦)帯電方式が有利な場合もあり、トコウではGema社製ガンを使用して最適な塗布を行います。
粉体塗装の風景
塗装条件の管理
- スプレーガンの電圧設定
- エア流量
- 塗料の吐出量
- 被塗物との距離
- ブース内の風向き
これらを総合的に調整することで、均一な膜厚と美しい仕上がりを実現します。粉体を厚くしすぎると反発や”額縁現象”が起きる場合もあるため、経験に基づく微調整が欠かせません。
3.4 Step 3: 焼付乾燥(硬化)
目的
塗布された粉末粒子を高温で加熱し、溶融・硬化させて一体化した塗膜をつくる工程です。ここでの温度や時間管理が、塗膜の強度や耐候性・耐薬品性に大きく関わります。
焼付条件
- 適正温度と時間の厳守
粉体塗料メーカーが指定する条件(例:180℃で20分)を必ず満たす必要があります。温度は炉内ではなく、被塗物自体の温度が基準です。 - 焼付不足 (Under-cure)
温度・時間が足りないと硬化が不十分で、早期剥がれや性能低下が起こります。 - 過焼付 (Over-cure)
逆に高温・長時間すぎると黄変や光沢低下、脆化が起こる場合があります。
炉の管理
炉内の温度分布が均一になるように制御し、被塗物の形状・材質に合わせて焼付条件を調節します。塗料によっては硬化時に分解物が出るため、換気をしっかり行うこともポイントです。
3.5 Step 4: 冷却・検査
冷却
焼付後は常温へじっくり冷やし、塗膜が落ち着くのを待ちます。急激に冷やすと、塗膜に不要なストレスがかかる場合もあるため、製品ごとに冷却の速度や方法を管理します。
検査
出荷前には以下のチェックを行い、全て合格した製品のみをお届けします。
- 外観検査
色合いや光沢、ムラ、異物混入などを目視で確認 - 膜厚測定
膜厚計で規定の厚みを確保できているかを計測 - 硬化度判定
溶剤ラビング試験や鉛筆硬度試験などで適切に硬化しているかを確認
このように一連の工程を厳格に管理することで、株式会社トコウは高品質かつ信頼性の高い粉体塗装製品を安定して生産しています。
3.6. 粉体塗装工程概要
粉体塗装の品質と長期耐久性を確保するためには、各工程における適切な管理が不可欠です。以下の表は、各工程における目的、作業内容、そして重要な管理点をまとめたものです。株式会社トコウでは、これらのポイントを厳格に管理することで、高品質な塗装仕上がりを実現しています。
| 工程名 | 目的 | 主な作業内容/方法 | 重要な管理点/注意点 |
|---|---|---|---|
| 前処理 | 表面の汚染除去、塗料密着性向上、防錆性付与 | 脱脂、除錆/表面調整、化成処理(リン酸亜鉛等)、水洗、水切り乾燥 | 各処理液の濃度・温度・時間管理、完全な洗浄と乾燥、化成皮膜の均一性、素材に合わせた処理選定 |
| 粉体塗布 | 粉末塗料を被塗物に均一に静電付着させる | 専用ブース内での静電スプレー塗装(コロナ/トリボ帯電) | 適切なアース、清浄な環境、均一な膜厚(ガン設定、距離、速度等の管理)、静電反発の抑制 |
| 焼付乾燥 | 塗料を溶融・流動させ、化学反応により硬化させる | 加熱炉で規定の温度・時間で加熱 | 被塗物温度と保持時間の厳守(メーカー指定条件)、炉内温度分布の均一性、過焼付・焼付不足の防止、適切な換気 |
| 冷却・検査 | 製品を冷却し、品質基準を満たしているか確認 | 自然冷却または強制冷却、外観検査、膜厚測定、密着性試験、硬化度判定など | 各検査項目の基準遵守、記録管理、不合格品の隔離・処置 |
これらの工程を一貫して管理することで、株式会社トコウは長期にわたって美観と機能性を維持できる高品質な粉体塗装製品を提供しています。お客様のニーズに合わせた最適な塗装条件の設定から、厳格な品質管理まで、トータルサポートをご提供いたします。
4. 品質の確保と長期耐久性
粉体塗装の美観や防錆効果を長持ちさせるためには、塗膜の品質管理と、使用環境に合った仕様選定がとても重要です。ここでは、品質を支える代表的な要素である「膜厚管理」と「剥がれ防止策」について、株式会社トコウの取り組みを交えながら解説します。
4.1 膜厚管理の重要性
膜厚がもたらす影響
粉体塗装の塗膜厚(膜厚)は、
- 外観(色・光沢・平滑性)
- 耐久性能(防錆性・耐衝撃性・耐摩耗性・耐候性)
- 組み立て精度(部品のはめ合い など)
といった広い範囲に影響を与える大切な要素です。塗料メーカーは、各塗料が最高の性能を発揮するために「推奨膜厚範囲」を定めており、これを逸脱すると不具合リスクが一気に高まります。
適切な膜厚範囲
標準的なポリエステル系粉体塗料の場合:
一般に 60~80µm 程度が推奨されます。用途や要求性能(屋外用、薄膜仕上げ、高防錆 など)に応じて変動があり、JIS規格(JIS K 5981)を基準に設定するケースもあります。
屋外用建材など、より高い防錆・耐候性能が求められる場合は、60µm以上の膜厚を推奨することも。
膜厚の測定方法
- 硬化後(乾燥膜厚)の測定
電磁式・渦電流式などの非破壊式膜厚計で行うのが一般的。 - 硬化前(未硬化膜厚)の測定
非接触膜厚計:非接触で焼付前の粉末層を測れるため、早い段階で膜厚を修正可能。
硬化前の段階で膜厚をチェックし、必要に応じて塗り直すことで、焼付後の手直しを減らし、品質リスクとコスト増を抑えることができます。
不適切な膜厚のリスク
- 薄すぎる場合:
隠蔽力の不足・耐衝撃性や防錆性の低下・ピンホールの増加など - 厚すぎる場合:
塗膜の密着不良・硬化不良(内部に熱が伝わらない)・脆化による剥がれ・外観不良(ゆず肌やタレ)・コスト増大など
株式会社トコウでは、工程内での随時チェックと最終検査のダブル管理で、常に規定どおりの膜厚に仕上がるよう徹底しています。
4.2 剥がれの防止と対策
剥がれの重要性
塗膜が剥がれると、見た目が損なわれるだけでなく、防錆・防食機能も失われてしまいます。腐食が進むと製品の寿命にも深刻な影響を与えるため、塗膜剥がれを起こさないことは粉体塗装の要となる課題です。
主な原因
- 前処理の不備
油分・錆・汚れの除去不足や、化成処理(リン酸亜鉛・リン酸鉄など)の不適切な施工が最も多い原因。 - 焼付(硬化)不良
温度・時間が足りないと硬化が不十分になり、剥がれやすい塗膜になります。 - 塗料と基材のミスマッチ
基材(鉄、アルミ、亜鉛メッキ など)や使用環境に合わない塗料を選ぶと密着不良や劣化が早まります。 - 膜厚の不適合
極端に薄い・厚い場合は剥がれやすくなります。 - 基材固有の問題
鋳物や亜鉛メッキ鋼板は焼付時にガスが発生しやすく、フクレ・ピンホールの原因となることがあります。 - 塗装時のアース不良・汚染
静電効果が低下し、塗膜が不均一になるなど、不具合が起きやすくなります。
剥がれ防止策
- 前処理の徹底
油分・錆・汚れをしっかり落とし、リン酸亜鉛処理などを適切に施すことで塗料の密着力を高めます。 - 適切な塗料選定
基材・使用環境・要求性能に見合った粉体塗料を採用。 - 厳密な焼付管理
塗料メーカーの指定通りに温度・時間を守り、被塗物の素材温度を実測して正しい硬化を確認します。 - 膜厚管理
均一に所定の厚みをつけることで、剥がれや品質トラブルを防ぎます。 - アウトガス対策
鋳物や亜鉛メッキ鋼板の場合は空焼きやガス抜き専用プライマーを使うなどして、焼付時のガス放出を抑えます。 - 清潔な塗装環境
ブースやガンの清掃、アース点検、エアの除湿・除油などを徹底して異物混入や帯電不良を防ぎます。
剥がれ発生時の補修
- 部分補修(タッチアップ)
小範囲の剥がれなら二液性などの液体塗料で修復が可能。ただし、粉体塗料とまったく同じ色・光沢に合わせるのは難しい場合があります。 - 完全剥離・再塗装
不具合が大きい場合は既存塗膜をすべて除去(化学剥離、熱剥離、ブラスト処理 など)し、再度前処理からやり直します。 株式会社トコウでは剥離作業にも対応しており、再塗装まで一貫サポートが可能です。
4.3. 剥がれの原因と対策(要約表)
以下の表は、粉体塗装における塗膜剥がれの主な原因とその対策をまとめたものです。これらのポイントを理解し、適切な対策を取ることで、長期間にわたって美観と機能を維持する高品質な塗装が可能になります。
| 主な原因 | 原因詳細 | 具体例 | 防止策 |
|---|---|---|---|
| 前処理不良 | 基材表面の汚染除去不足、または密着性向上のための下地形成不足 | 油脂・錆・水分の残留、不適切な化成処理、指紋付着 | 素材・汚染に応じた最適な脱脂・除錆・化成処理の実施、各工程間の徹底した洗浄・乾燥、清浄な作業環境の維持 |
| 焼付(硬化)不良 | 塗料の硬化反応が不十分 | 焼付温度不足、焼付時間不足、炉内温度ムラ | メーカー指定の焼付条件(被塗物温度と時間)の厳守、炉内温度プロファイルの測定・管理、硬化度テストの実施 |
| 材料/塗布の問題 | 塗料と基材の相性、膜厚、塗装条件の問題 | 不適切な塗料種(樹脂)の選択、膜厚過多・過少、アース不良、静電反発 | 素材・用途に適した塗料の選定、適切な膜厚範囲での均一塗布(塗装条件管理)、確実なアース接続、塗装環境管理 |
| 基材の問題 | 基材自体に起因する問題 | 鋳物・亜鉛メッキ等のアウトガス、溶接部の油滲み出し | 多孔質材への予備加熱(空焼き)または専用プライマーの使用、溶接部の事前洗浄・確認 |
5. 粉体塗装の用途とトコウの強み
粉体塗装は、耐久性・環境性能・仕上がりの多様性といった特長から、様々な分野で広く利用されています。ここでは、主な応用分野と株式会社トコウの強みをご紹介します。
5.1. 広範な応用分野
- 自動車関連: アルミホイールやシャシー部品、二輪車フレームなど、耐食性・耐久性が重視される部品に多く採用されています。
- 建築・建材: アルミサッシ、ドア、手すり、屋外パネル、鋼製部材など屋外環境で使用される建材に適します。
- 家電製品: 冷蔵庫や洗濯機、エアコン室外機など、外装や内部部品に粉体塗装が採用される例が増えています。
- 産業機器・設備: 配電盤や制御盤、機械カバー、スチール棚、工具など、耐薬品性や防錆性を求められる製品に使われます。
- 屋外製品・公共資材: 公園遊具、街灯、信号機、ベンチ、エクステリア部品など、過酷な屋外条件に耐える必要がある製品に適しています。
- 家具・什器・雑貨: スチール家具やオフィス什器、自転車フレーム、照明器具など、意匠性と耐久性を両立させたい製品にも広く導入されています。
5.2. 株式会社トコウの専門性と強み
- サイズ対応力: 小さな部品からW3500 × D2500 × H2500 mmほどの大型ワークまで、幅広い寸法に対応可能です。
- ロット対応力: 1点の試作品から多品種少量、中ロット、量産まで、幅広い生産規模をカバー。製品開発の初期段階から量産まで、一貫した塗装サポートが可能です。
- 小ロット調色対応: 一般的な業界標準(300kg前後)よりはるかに小さい60kgから特注色の調色を最短2週間で行えます。標準色・準標準色も豊富に揃えており、ブランドカラーなど特殊な色を少量から実現できます。
- 高品質な設備: 世界トップクラスのGema社製静電粉体ハンドガンを導入し、形状が複雑なワークでも安定して均一な塗膜を得られるよう設計されています。
- 付加価値塗装: 抗菌効果を付与した粉体塗装など、機能性塗膜も対応可能です。衛生面が重要な医療機器や食品関連設備などにも高付加価値を提供しています。
これらの強みを通じて、トコウでは多様な製品・色・機能・ロット数に対応できる柔軟な体制を整え、お客様のニーズに合わせた高品質な粉体塗装サービスをご提供しています。
[ 塗装大辞典へ戻る ]









